開発ストーリー
Our Story
- 豆と発酵に人生を賭ける
- ハッコウホールディングス株式会社代表の入海健はビジネスマン人生のほぼすべてを「豆と発酵」の可能性を実現するためにささげてきました。なぜそんなに情熱を燃やし「豆と発酵」に取り組むのか。入海は「豆と発酵」でどんな未来を思い描いているのか。
そのキッカケはほんの小さな不安からでした。 - 食料の未来への不安
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明治大学農学部で農芸化学を学んだ入海は卒業後渡米し、テキサス大学で心理学修士課程を修了します。
2006年に帰国し、機械系メーカーで3年間勤務したのち、バイオ・化学・食品分野の特許調査会社へ転職しサラリーマンとして着実にキャリアを積み重ねていました。
そのころに知り合ったのが、当時船井総研に在籍していた田中友一郎でした。どうにも馬が合ったというのでしょうか。入海は年上で会社も違う田中を慕い、漠然と感じていた「不安」と「不満」をぶつけます。
それは言葉にすると「一般の日本人は食にこだわるわりに、食料の未来に意識が薄い」というものでした。もともと明治大学で農学部にいた入海は食料生産、農業に対して日頃から意識することが多かったと言います。そんな入海がテキサス大学で触れ合ったアメリカ人たちは、当時すでに未来の食糧問題に高い意識をもっていたそうです。
そういった経験を経た入海が日本で過ごすうちに、多くの日本人が持つ「食料・農作物はあって当たり前」という感覚の危うさに漠然とした不安を感じ始めていたのです。当時、入海からそういった話を聞かされた田中は入海の感じる問題意識を解決するには「自分でアクションを起こすしかない」と感じ起業を勧めたと言います。
しかし、その時の入海には「何をやれば不安を安心に変えられるのか」のイメージがつかめず起業へ踏み切る決断が出来ずにいました。
- 大豆発酵食品が持つ可能性への気づき
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何か自分に出来ることはないか?そんな焦りにも似た気持ちで過ごしていた入海は、母校明治大学で発酵食品学を教わっていた加藤英八郎先生が講演するという情報を聞き、ふと参加してみることにしました。
そこで聞いた講演は「すべてが繋がるような衝撃的な経験だった。」と入海は振り返ります。
加藤先生が講演したハイビスカスの葉に棲む微生物を大豆に付着させて作る「テンペ」に関する特許技術を事業化する産学連携(TLO)の内容に感銘を受けた入海は、すぐに加藤先生に連絡を取り、詳しく教えを請いました。
大豆は一般的には消化が悪い食材ですが、加藤先生の研究する発酵技術により栄養価を高め、消化吸収を良くして、さらに食味まで向上させるという素晴らしい研究だったのです。
加藤先生との出会いで大豆・豆類を発酵させることによる可能性にあらためて気がついた入海はこれまで感じていた「不安」を「豆類を発酵させた食品」で解決し「安心な未来」へ繋げられるかもしれないと確信を得て、いよいよ起業を決断したのです。
- 挫折と試行錯誤の日々
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2011年に株式会社テンペストフーズを創業した入海は大豆を皮ごと発酵させることで栄養価が豊富な食品として「テンペスト」の開発に向けて動き出しました。
しかし「発酵技術」は量産化・安定化させることが非常に困難で、試行錯誤の繰り返しの日々が数年間続くことになります。
サヤから外した大豆には皮があります。この皮は外敵から身を守るため固く、発酵しづらい性質があります。「テンペ」はこの皮をむいて発酵させるものですが、入海は「皮ごと発酵させる」という方法にこだわりぬくことにしました。なぜなら皮ごと発酵させると、皮無し発酵よりも食物繊維や各種アミノ酸などの栄養価が高くなり、さらに美味しくなることがわかっているからでした。
ところがこの「皮ごと発酵させる」ことを、毎回同じように安定して発酵させるにはいくつものの技術的な課題をクリアする必要があったのです。
失敗を何度も繰り返す中で、どうにか少量ではあるものの安定的に発酵させる方法を確立し、2017年にはものづくり補助金の採択もあって、特殊な発酵槽を開発することで、ようやく入海がこだわり抜いた大豆を皮ごと発酵させた製品「テンペスト」を完成させることに成功しました。
この時すでに創業からすでに6年が経っていました。 - ルピナス豆との出会い
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大豆を使った発酵食品「テンペスト」を完成させたのですが、その過程で「大豆」の限界も知ることになりました。
日本では非常に親しまれている「大豆」ですが、欧米ではほとんど食べられておらず、むしろ大豆独特の風味が敬遠されているという食文化の違いがあったのです。大豆食文化はアジア圏が中心で欧米では馴染みがないと知った入海は大豆以外の豆類の情報を集め、積極的に試作に取り掛かりました。「ひよこ豆テンペスト」を作ったのもこの頃のことです。
そんな折、知人がヨーロッパ旅行中に食べた料理の写真に写っていた「見慣れない豆」が目を引きました。その豆は海外、特に地中海地方で古くから良く食べられている塩ゆでルパン豆=「ルピナス豆」だったのです。
調べてみるとルピナス豆は大豆特有の風味・クセがなく非常に美味しいとされ、さらに大豆と同等のタンパク質量があり、大豆の約3分の1の水で育つ、など素晴らしい特長を持っている豆だということがわかりました。
早速ルピナス豆を手に入れようとしたところ、驚きの事実が発覚します。なんと日本では食用として輸入が認められていないというのです。その理由は原種に近い品種に含まれるアルカロイド(苦み成分)の含有量が多いという理由でした。
諦めきれない入海がさらに調べたところ、日本国内で栽培したルピナス豆に対しての規制はありませんでした。つまり、国内で「低アルカロイド品種」を栽培して食用に流通させるのであれば問題ないということです。しかし、そもそも日本国内に「食用ルピナス豆」が存在しませんでした。そこで入海はどうにか手に入れたわずかなルピナス豆を自宅のベランダで栽培しながらすこしずつ種を増やし、大学や農業技術センターの協力を得ながら育種・選抜を繰り返し品種改良に取り組みました。そうしてついに、国内初の食用低アルカロイド品種の「食用ルピナス豆」を4年がかりで開発することに成功しました。
- 持続可能な取り組み(サステナビリティ)へのチャレンジ
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2024年3月これまで取り組んできた複数のビジネスを統合・再編し、あらたにハッコウホールディングス株式会社を設立しました。
加藤先生の研究を基礎として、試行錯誤の上で安定化させた発酵技術を「アラネア®発酵」と名付け、「アラネア®発酵」によって生み出される製品を醸造した豆=醸豆(JYOZ/ジョウズ)として世に送り出すことにしました。大豆で作った醸豆(JYOZ/ジョウズ)「テンペスト」を製造してきたノウハウを活かし、国産化ルピナス豆を使った新たな醸豆(JYOZ/ジョウズ)の開発にいよいよ乗り出します。
また「テンペスト」でも新しい取り組みにチャレンジします。「テンペスト」をより多くのご家庭で食べ、親しんでいただくために加工食品の開発をスタートしています。
神奈川県葉山町に「葉山工場」も新たに契約し、拡大する需要への供給力を強化しています。2024年には東北大学との共同研究契約を締結して新たなプロジェクトが動き出しました。
ルピナス豆を栽培することでCO2の298倍の影響があると言われる温室効果ガスN2O(一酸化二窒素)の削減を行い、CO2と同様にブロックチェーンを用いてクレジット化させる取り組みがスタートしています。(国際特許出願中)N2Oクレジットで得られる収益をルピナス栽培農家へ還元することで、農家の収益性を向上させて、農家が持続的に生産し続けられるビジネス環境を作りながら未来に向けて「安心して食べられる高栄養価な食品」を供給する。という目標へいよいよ踏み出すことになりました。
- 豆と発酵で世界を変える
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2011年に志を立ててから13年目になる2024年。ようやく「不安」を「安心」へと変えていくためのスタートラインに立つことが出来ました。
これまで失敗と挫折を繰り返しながら研究と開発に試行錯誤を続け、気が付けば13年があっという間に過ぎていました。これまで協力してくださった方々に感謝し、いよいよ世界の社会問題として顕在化してきた食糧事情・タンパク質危機に役立てる製品群を提供してまいります。
豆類は世界に18,000種あると言われています。その中で食用に供されるものは70~80種程度です。豆類の持つ豊富なたんぱく質や食物繊維、栄養価については注目されているにも関わらず、そこまで多くの種類が食用とされていないのは、多くの豆類は生食に適さず、調理・加工に手間がかかるという点があると考えています。
ハッコウホールディングス株式会社の培った「アラネア®発酵」はアミノ酸量を増やし旨味成分を増やすことがデータで証明されています。
これまで育て上げた豆と発酵技術を使って「安全で」「安心で」「美味しく」「栄養価が高く」「手に入りやすい」5拍子そろった食品を提供することで、世界の未来を変えていく。
創業者の入海健の思いと共に世界中の食卓を豊かなものにしてまいります。